小論文 映像・写真系(ストーリー制作2)
与えられたテーマから物語を制作しなさい。
午後十九時を回ると、先ほどまで赤かった夏の空は、青黒くなった。
そこへ打ち上げ花火が空を覆うように続けざまに上がり、轟く爆音は周囲の騒音を打ち消した。
打ち上げ会場の土手に集まった約六千もの人々は、一瞬凍りついたような静けさから、一斉にワァーッと歓声を上げる。
そこで私は一人、地面を見つめていた。ここへ一緒に来るはずだった彼女を思い出し、絶望していた。
「もう帰ろ。」
周囲の騒音にも嫌気がさして、花火を背にして歩き出した。頭上に葉の茂る気が差し掛かる......その時だ。
花火に彩られた美しい光が、足元に木の影を映し出した。連続して照らし出すその光の中で影は生まれて儚く消える。それはまるでダンスクラブの激しく点滅する照明の中で影が踊っているようだった。さっきまで影のように暗く沈んでいた私の心を、この光が明るく照らす。この光が周囲の雑踏から、私だけを別世界へと解放してくれた。
静けさに包まれた光と影だけの世界。全てが影絵のように映る美しい世界。
仮面に映る木の葉の影は風に優しく揺らされていた。波のように、しなやかに土を撫でていた。
この作品は、映像系小論文の受験対策で当塾在籍生が制作した映像系小論文の参考作品です。
これは、自分の失恋した体験を基にした物語です。ともすれば感傷的で視野が狭くなってしまいがちな失恋という体験ですが、この受験生は見事に「文章表現」の領域にまで高め、アートセンスの高さが滲み出た、印象的な読後感の文章に仕上げることができています。
先生が決めた枠に従わせたり、書き方を指定したりする不自由な受験対策では、このような優れたセンスや読後感を感じさせる文章は、書けなくなってしまいます。受験生のアートセンスを信じ、その良さを自由に活かそうとする当塾の授業方針があるからこそ実現します。
考えてもみてください。評価の高い文学作品は、全て「起承転結」の書き方を守っているのでしょうか?そうではないはずです。大勢の人間から評価されるような優れた文章作品は、常に制作者の自由な感性によって、自由な文章表現・文章構成で成り立っているのです。
受験生の感性の豊かさを信じ切ること。どこかで聞いたような浮ついたストーリーではなく、自らの体験を大切にし、それを宝石の原石として一つの「文章表現」にまで高めてしまうこと。それが、優れた物語制作力を受験生に養う当塾の映像系受験対策の授業方針です。