
現在の美大受験生のレベルは・・・
それでは、現在の美大受験のレベルです。25年前を「合格レベル100以上」とすると、現在は「合格レベル10〜30程度」にまで下がってしまっています。理由は下記の通りです(上から順番に影響の大きい要素となっています)。
- 少子化で子供の数が減り、競争率が下がった。
- 浪人しなければどこの大学でもよいという考え方が増えた。
- 大学が新設学科を開設し、入学定員が増えた。
- 「地元志向」が広まり、地方から東京に出てくる優秀な受験生が減った。
25年前は2浪生・3浪生が合格の中心。現役生にとって2浪生は2年上の先輩、3浪生は3年上の先輩です。現役生の美大受験は、「高校3年生レベルが当たり前の世界で、中学3年生が勝負する」くらい無謀なことだったのです。
しかし皆その「無謀」に挑戦しました。なぜなら、この頃の美大受験生は、「真剣にアートに取り組みたいと思っている受験生」だけで占められていたからです。
少ない情報に苦労した、ネットがない時代
インターネットない25年前は、アートの情報を得るだけでかなり苦労しました。図書館・書店・新聞・雑誌でもアート関連の情報はほとんどなかったのです。なぜなら「大多数の人はアートにさほど興味を持っていない」からでした。
そんな時代の中で、アートの世界に進もうとするのは、非常に大きな冒険でした。でも、それでもみんな挑戦していました。25年前の美大受験生は、それほどまでに大きなモチベーションでアートの世界を目指していたのです。
ネットの普及で情報が膨大に増えた現代
しかし現在は違います。アートの情報は検索すれば簡単に表示されます。デザインのマーケティングでの重要性が認識され、日用品のデザインが昔より洗練され、現代は優れたデザインが当たり前のように身の回りに存在します。
だから現代では軽い気持ちでも美大を目指せます。ただし、最初は軽い気持ちでも良いけれど、目指すうちにいかに真剣になれるかで実力の伸び方が大きく変わります。アートの世界は実力勝負。一番大切なのは、実にそこなのです。
1960年代と現代は実は似ている…
さて、記事「高校卒業者数は50年前と同じ」で、私は「少子化は18歳人口を50年前並みに減らしてしまった。1960年代をひとつのモデルケースとして考慮できる可能性がある。」と書きました。
実は、同じようにかつてないほどに日常に優れたデザインやアートが満ち溢れた時代がありました。それが、様々な大衆文化が花開いた1960年代です。この意味でも、現代は1960年代にかなり似た状況となっています。