
テクニックでは勝負はつかない1
一般大学受験では、受験は「受験テクニックで決まる」というのがセオリーです。しかし、美大受験の世界では、「受験テクニックで決まる」は通用しない現実があります。
どのような分野でも、テクニックというのは初心者の頃が一番伸びが大きいものです。そして、上級者ではテクニック的な差は大してなくなります。これは、プロスポーツの世界や音楽の世界を考えてみるとわかると思います。
スポーツで例えてみると…
例えば、プロ陸上競技は、零コンマ何秒の差で勝負が決定します。しかし、一般人はプロ陸上選手に比べ、何秒という単位で走る速さが劣っています。「零コンマ何秒」の世界から見ると、「1秒」の差は10倍以上の差となるのです。
でも、例えば部活で陸上をやっていたら、1年生の時と2年生の時では、タイムに1秒以上の差が出てもおかしくありません。
音楽で例えてみると…
音楽の世界も同じ。例えば、世界最高峰ピアニストの「マルタ・アルゲリッチ」と「マウリツィオ・ポリーニ」の差はテクニックにより生じているのではありません。一般人からすると「どちらも圧倒的に素晴らしい」としか言わざるを得ないのです。
しかしピアノを習い始めた頃と1年後のテクニックを比べれば歴然の差があります。テクニックとはそういうものです。中間・期末試験で20点の生徒が次に25点を目指すのと、95点の生徒が次を100点にするのと、どちらがより難しいでしょうか?
美術の世界は、実力勝負
美大は実力勝負。美術の上級者がさらに競い合う場です。美大生=美術のプロの一歩手前であり、美大合格のレベルは本質的にテクニックの差が生じないはずです。高度なテクニックは持っていて当たり前。それがプロの世界なのですから。
後述しますが、美大生というのは、美術に関する能力が「上位1%」であるはずの人たちです(18歳人口120万人に対して、美大生は1万人程度)。これはもう、「プロ」「セミプロ」の割合です。
テクニックでは、差がつかない
だから、高度なテクニックはあって当たり前なのです。テクニックでは、大した差はつきません。差がついているとしたら、それはまだ美大受験生として「甘い」ということなのです。
しかしこの20年の少子化と大学数・学部数増加による大学受験の変化は、この「テクニックでは勝負はつかない」の内容に大きな変化をもたらしました。次の記事では、25年前と現在の「差」について説明します。