危険信号大学をチェック
文部科学省は毎年「設置計画履行状況等調査の結果等について」という調査結果を発表します。
これは教育水準の維持ができていない全国の大学・新設学科への「警告」「是正・改善意見」を公開したものです。例えば、平成27年度(2015年度)版で「警告」「是正・改善意見」が付された大学は全国279校にも及びます。
幸い、東京近県の美術大学については、このリストの中にほとんど含まれていません。美大受験生をお持ちの保護者の方は、東京での美大受験の上位校を狙う限りは、この件については安心して美大受験に取り組んでいただけます。
リンク先では、全国的に有名な大学、例えばMARCHレベルですらリストに上がっています。現代の大学受験生は努力・研鑽して少しでもリスクが低くレベルが高い大学・学部・学科を目指す必要性が生じているのです。
教育水準が低い大学が出てきたワケ
このような現状の理由は「大学設置数」のグラフに「大学入学者数」のグラフを重ね合わせるとわかりやすくなります。
1990年代半ばまで大学数の増加(水色折れ線グラフ)と大学入学者の増加(灰色の棒グラフ)は比例しています。しかし1995年以降は大学入学者数が横ばいにもかかわらず、大学の新規開校数だけが早いペースで上昇し続けました。
「大学全入時代」の理由は…
これが大学全入時代の原因です。大学の新規開校数グラフと大学入学者グラフの傾きの差は、そのまま大学の定員割れにもつなります。受験生の数があまり増えていないのに、大学入学定員だけが増えているわけですから。
定員割れ大学は、大学運営資金(=受験料と授業料金)が集まらず、適切な大学運営ができなくなり教授や授業の質を大きく落とします。授業の質が落ちれば卒業生の質も落ち、就職先でその大学の評判を落とすことにもなるのです。
「設置計画履行状況等調査の結果等について」に掲載されている大学は、危険信号が出ている大学です。大学運営・授業運営自体を改善するには余計な費用・時間・労力がかかり、それがますます大学の質を落としかねないリスクとなっているのです。