
行き詰まりから抜け出す
人間、誰しも壁に当たってしまうことがります。今までやってきたことに限界を感じ、それ以上進めなくなってしまうのです。それは大きなストレスをもたらし、しかも、解決方法が見えないままに停滞してしまう原因となります。
それは、どのような場合にも起こりうることなのですが、そういう場合の解決方法は、意外と単純です。それまでにやっていたことを止めて、全く別のことをやり始めれば良いのです。
私は、受験直前に受験生に英語や国語の試験本番の心構えとして、こう言います。
「30秒考えて答えが出なかったら、そのままやり続けても答えは出てこないよ。だから、ほっといて次の問題に取りかかりなさい」
30秒という時間は、考えるのには意外と長い時間です。30秒の中で考えの筋道は大体限定されたものになってしまい、他のものは見えなくなってしまいます。つまり、30秒という時間の間に、視野が大きく狭まってしまうのです。
しかし、答えというのは、その狭まった視野の外にある場合も多いのです。だから、そのように視野が狭まったままでそのまま考え続けても、決して答えは見えてこないのです。
だから、一旦止めて、他のことをしばらくやってみてから、また取り掛かってみる。そうすると、信じられないほどスムーズにうまく進んでいくことは非常に多いのです。なお、これは心理学では「レミニセンス」と呼ばれているようです。
私は、今まで全く美術の世界とは異なった世界で仕事をしてきた方達が美大受験を目指すことを、積極的に応援しています。理由はいろいろあるのですが、その一つに美大受験がこの「レミニセンス」効果を持つ可能性が大きいからでもあります。
社会を構成する様々な要素が、複雑なシステムの中でがんがらじめに組み合わさっています。しかし、人間には「個性」とそれを支える固有の「感性」が存在しています。それが、既存のシステムと合わなくなってくる場合も多いのです。
そのような場合、美大を受験してみることが解決方法を示すことがあります。アートの世界は、「個性」と「感性」を重視する世界です。行き詰まった状態から抜け出し、「レミニセンス」効果を期待するのに最適な世界でもあるのです。