美大受験の現状と社会人
社会人の方が美大受験をする場合、多くは編入学試験や大学院入試、あるいは総合型選抜・自己推薦入試などの特別入試の形式で受験がほとんどですし、その方が合格する確率は高くなると言えます。
現在、美大受験の一般入試は単なる「テクニックの競い合い」となってしまっています。多くの美大予備校が固定されたカリキュラムの中で受験生に対して枠を嵌め、みんなが同じような作品を制作してテクニックを競い合っています。
これは、大学が発行している「合格者参考作品集」を見れば、はっきりとわかります。合格している受験生のほとんどが、同じような内容・ビジュアルの作品を作ってしまっているのが、見て取れることと思います。
実はこの傾向は、集団指導の美大予備校が作り出してしまっているものです。集団指導の美大受験対策では、「枠を嵌めて、その中だけで評価する」というやり方が、一番効率が良いからです。
これは、ビジネスの世界を経験してきた社会人の方であれば、理解できるのではないでしょうか。ある程度の大人数になってくると、システムの中に個人を嵌めこみ、個人の自由を制限しないとうまくやっていけないのです。
しかし、これはアートの世界にとっては憂慮すべき事態です。なぜなら、「個性」を重視するアートの世界では、みんなが同じようなものを作ってしまい均質化してしまうことは、決して良い傾向であるとはいえないからです。
このような傾向は、もちろん、大学側も憂慮しています。だからこそ、近年は特別入試のような「作品の均質化」が起こる可能性が非常に低い入試形式の募集人数が増える傾向にあると、私は分析しています。
個性や将来性に乏しくアピールするべき特徴のない受験生は、型に嵌ったテクニックを競い合うだけの一般入試を、僅かな点数差でなんとか合格している状態です。社会人は、一般入試での美大受験はご本人の良さを生かすことができないのです。
社会人の皆さんは、普通の美大受験生とは大きく異なります。ビジネスの世界を経験してきた、というだけで、積極的にアピールするべき「特別な個性」を持ち合わせているのです。
現在の美大受験の傾向として、個性的で将来性のある人材は特別入試で合格する傾向にあります。だからこそ私は、社会人の皆さんは個別指導でご本人の個性と将来性を明確にし、特別入試で美大へ入学することをお勧めいたします。