やる気と実力のある人材に
私は、美大受験業界で30年近く先生として仕事をしてきました。その間ずっと様々な分野を幅広く見渡してきた結果、明確に見えてきた傾向があります。
30年前に比べると美大受験生の数は半分近くに減っています。主な原因は「少子化」です。そんな時代だからこそ、「やる気と実力のある人間」を美大側がより強く求めています。
少子化は、もちろん、社会全体の流れです。美大だけではなく、一般大学も含めて子供の数は大きく減っています。当然のことながら、大学受験をする受験生数も減少傾向にあります。
美術の世界は、実力主義の世界です。どの分野も同じですが、全体の人数に対する「実力のすごい人間の割合」は、とても少ないものです。大雑把に考えると、以下のような状態です。
例えば、30年前に10000人の受験生がいたとします。美大に入学する学生は概ね1000人くらい。そうすると、実際に入学している学生は、「すごい実力の人(100人)」と「実力のある人(900人)」となります。
つまり、「実力のある人:10%」の中から、1%程度は合格できないのです。今現在美大で教授をやっている人達は、このような厳しい条件の中をくぐり抜けて美大に入学してきました。
しかし、今は30年前の半分近くに受験生が減っています。数は5000人くらい。定員は変わらず1000人です。そうすると、実際に入学する学生は、「すごい実力のある人(50人)」「実力のある人(500人)」「普通の実力の人(450人)」となってくるのです。
つまり、30年前は入学できないレベルの受験生が入学できてしまっているということになります。これが、21世紀の美大受験の現状です。大学側が入学定員を減らさない限りは、この傾向は続くでしょう。
これが、社会人経験者が積極的に美大受験をする価値がある理由です。つまり、「厳しい実力競争を生き残ってきたすごい実力の美大の教授」が「意識が低く、実力が普通でも合格してしまう美大生」を憂慮しているのです。
私は社会人経験者を今までに何人も美大に合格させてきていますが、社会人を経験された方はみなさん意欲的で、実力向上に対するモチベーションも高い状態にあります。そのような「人材」を、美大は喉から手が出るほど欲しがっているのです。