国語数学理科社会......といったように、中学・高校のうちは、たくさんの科目を同時に学んでいきます。しかし、美大受験生のみなさんはそれらたくさんの科目の中から「美術」という1科目に集中するのを決めることになります。
美術大学に限らず、大学以降は学ぶ内容が専門化してくるものです。この「専門化(あるいは特化)」というのは、人類の長い歴史の中で築き上げてきた、非常に効果的な発展と発達のあり方なのです。
さてここで、「和太鼓」を作ることを考えてみましょう。
和太鼓の製作に必要なものを仮に「(1) 木を削って『胴(ボディ)』を作る」「(2) 胴に張るための『革』を作る」「(3) 革を固定する金属の『鋲』を作る」「(4) 全てを組み合わせて完成」の4つの工程があるとしましょう。
昔は、この4つの工程を全て職人さんがひとりでやってきました。4つの工程全てを同時進行で行い、その全てで高度な技術を示すことができてはじめて、初めて一人前の職人扱いされるようになっていたのです。
しかし、このやり方は時間がかかりすぎます。どれほど才能がある人でも、このやり方では1人前になるまで数十年かかってしまうのです。
そこで、人間は長い歴史の中で「分業(=専門化、特化)」の概念を考え出しました。4つの工程のそれぞれを4人の人間が分担し専門的に担当することにしたのです。そうすることによって、多くのメリットが生じてきました。
例えば「(1) 木を削って『胴(ボディ)』を作る」を担当する人は、ずっとそれだけをやっていれば良いのです。他に余計なことをやらずに同じことを繰り返しやっていくわけですから、当然、上達の速度がスピードアップします。
だから、一人前になるのも随分と早く実現します。昔は数十年かかっていた「一人前」は、このやり方だと実力と才能次第ではるかに短い時間で実現することになります。専門化することのメリットは、非常に大きなものです。
当然、美大受験生の皆さんが1つに分野を絞って努力していくことにも大きな価値があります。より早く、より確実に実力アップするためには、1つのことに集中し、それをやり続けていれば、志望校合格の確率はどんどん高まるのです。
実際、大学側も自分でやりたいこと、得意なことがはっきりしている受験生を優先的に合格させている傾向があります。特に、推薦入試や編入学試験、大学院入試などは、その傾向が非常に顕著です。