作品作りにしろ勉強にしろ、長期間にわたってやっていると、ついついダレてきたり手を抜いてしまったりするものです。しかし、そのような誘惑に負けないことは、大きな価値を生み出すことになります。
日本の名経営者・思想家として有名な松下幸之助氏の言葉で、以下のようなものがあるそうです。
「きみ、仕事をしてるわな。毎日、会社に行くやろ。けど、毎日、同じ仕事の繰り返しではいかんよ。早い話、毎日、昨日はどうであったか。今日は、昨日より、進んだ姿で仕事をしているのか。そういうことを常に考えんといかんな」
これはそのまま、美大受験の世界でも当てはまります。
基本に人間は、「現在よりもちょっと上」を「継続的に目指していく」ことで成長をしていきます。これは、どちらが欠けてもいけないし、どちらかが逸脱してもうまくいかなくなってしまうのです。
例えばこれは、「筋トレ」を考えていただければ、理解できるのではないでしょうか。
「筋トレ」をする場合、「現在よりもすごく上」を目指してやってしまうと、体を壊してしまうリスクがあります。美術は肉体的なものではりませんが自分を掘り下げる作業となりますので、精神を壊してしまうリスクを抱えることになります。
また、「筋トレ」をたった1回やっただけでは、その効果が定着することはありません。少しづつでも毎日継続的に行うことで、筋肉は無理なく鍛えられ、長い時間をかけて頑丈で美しい肉体を手に入れることになります。
だから、松下幸之助の言葉通り、「今日は、昨日より、進んだ姿で」美大受験に取り組むことが最も効果的となります。そうやって少しづつ近づいていけば、ちゃんとゴールが見えてくるものなのです。
美大受験の指導で講評が必ず含まれるのは、先生が生徒に対して「今日は、昨日より、進んだ姿で」美術に取り組むためのヒントを提示するためです。そして生徒は講評を聞き、「明日は、今日より、進んだ姿で」志望校合格を目指していくことになります。
授業時間の90分をフル活用しての講評は、そういう合理的でポジティブな意味を持っているのです。