
どの美術大学でも、おおむね映像系の学科を開設し、受験生を募集しています。
しかし、各大学で映像系学科に関する呼称が異なり、どの学科をどのように受験したらよいのかがよくわからない受験生の方もいらっしゃると思います。
以下では、各大学の映像系学科の紹介と、受験に関する簡単な説明を行っていきます。このページでは、主に「メディア系」「アニメーション系」の学科を紹介します。
東京造形大学 デザイン学科 映画専攻
美大受験においては、「映画」というのは、概ね伝統的な「実写映画」を研究する学科である、と考えてよいでしょう。
後述のように、東京造形大学には「映画」の他に「写真」「アニメーション」「メディアデザイン」の各専攻が存在しています。
このことから、実写映画をとってみたい、将来は映画撮影のスタッフとして働きたい、といった受験生は、東京造形大学デザイン学科映画専攻を受験するのも、ひとつの選択肢しとなります。
東京造形大学 デザイン学科 写真専攻
映画などの動画ではなく、静止画(スチル写真)を撮影することを研究するための学科です。
後述の通り、インターネットなどのメディアをメインに表現手段としていくのは「メディアデザイン専攻」ですので、この学科で学ぶのは、アナログ写真の方法論を主軸とした写真表現です。
撮影した写真そのものを活かしていくタイプの表現を模索したいのであれば、この学科は選択肢のひとつとなるでしょう。あくまでも写真は一素材であり、コンピューター等の加工をメインに勉強したい場合には、後述のメディアデザイン専攻の方がよいかもしれません。
東京造形大学 デザイン学科 アニメーション専攻
その名の通り、アニメーションをメインとして研究をしていくための学科です。
いわゆる「アニメーター(原画描き)」は典型的な技術者であり、専門学校卒業でも仕事はできるのですが、大学のアニメーション学科へ行く、ということは、アニメーターになることを意味するのではありません。
最終的には自分自身でアニメーションを監督したりプロデュースしたりと、技術職ではなく、多くのクリエイター達をまとめて一つの作品を作ることを目指すようなタイプの受験生が、アニメーションを専門的に学ぶ価値があるといえるでしょう。
東京造形大学 デザイン学科 メディアデザイン専攻
専攻名には「デザイン」とついていますが、映像系の実技対策で受験することが可能な専攻です。
近年では、どのような分野においてもコンピューターの利用頻度が上がっており、コンピューターを使用する、という意味では明確なジャンル分けがしづらい状態となっています。
コンピューター画面に映す映像の作成、という意味では、メディア系の学科も、立派な「映像系学科」なのです。
静止画・動画にとらわれず、コンピューターをメインのツールとして使用しながら制作活動を行っていきたい受験生にとっては、東京造形大学のメディアデザイン専攻は有力な選択肢となるでしょう。
東京工芸大学 芸術学部 写真学科
「写真学科」の名の通り、写真(静止画)に限定した内容を学ぶ学科だといえます。
映像(動画)に関する分野の学習はほとんど行いませんので、写真、特にアナログ写真(フィルムカメラによる撮影)に対して強いこだわりがある受験生は、この学科を目指す価値があるでしょう。
映画学科も写真学科も、日大芸術学部の映像系学科は、基本的に「保守的な」学科です。インターネットなどを使用したり、パソコンの可能性を追求しようとするメディア系の学科ではありませんので、デジタルメディアを通じての自己表現を目指す受験生は、方向性が異なっているといえるでしょう。
なお、東京工芸大学は、元来は写真の専門学校から生じた大学ですので、武蔵野美術大学の映像学科のような「アート寄り」「表現寄り」の学科というよりも、かなり「技術寄り」のアプローチを行っていく学科だといえるでしょう。
東京工芸大学 芸術学部 映像学科
いわゆる「映画」というよりも、テレビなどのマスメディアを志向した「映像」という印象です。
武蔵野美術大学の映像学科のような「自己表現としての映像」を目指すのではなく、与えられた仕事を確実にこなしながら映像の世界でやっていこうというタイプの受験生には最適な学科だといえます。
東京工芸大学 芸術学部 アニメーション学科
自己表現として映像を追求するというよりも、何らかの立場でアニメーションの制作に携わっていたい、というような受験生には最適の学科です。