当塾より武蔵野美術大学 基礎デザイン学科の推薦入試で合格した受験生が制作したイラストレーション作品です。アーティスト ベルナール・ビュフェのスタイルをペン画で完全に踏襲。アートとデザインの境界を超える優れた表現力です。
制作者のコメント
19世紀末にカメラの技術が発達し、目の前の光景を保存することがより簡便にできるようになった。これが、芸術の世界全体を、大きく変えた。写実性の高い描写をする必要性が薄れ、アーティスト達は、写実性を再現する高度な技術ではなく、「自己」の内面を見つめ、自分自身の表現を見つけ出す方向性へと表現をシフトした。
画家が自ら作っていた「絵の具」をメーカー製の絵の具に頼るようになったことは、退化ではない。デザイナーが全て手描きで制作していた設計図を、パソコンのアプリケーションにより制作するようになったことは、退化ではない。どちらも、むしろ「進化」なのだ。人間は歴史の中で、様々なものを生み出し、そして、その生み出されたものに適応しながら文明を築いていった。だから、昨今のコンピューターや人工知能が人間の能力に台頭する傾向は、決して危機ではないのだ。次世代を担うデザイナーは、むしろ新しいテクノロジーや時代の傾向に合わせ、柔軟に変化していけば良い。手間なこと、面倒なことをコンピューターや人工知能に任せることにより、デザイナーは、むしろ自分の意思で自由に発想・行動できる「時間」を獲得できるのである。
自由な世界こそアートだ。デザイナーがAIの力を借りることで、創造的な行為に費やす時間が飛躍的に増える。埋もれているものを掘り出すのではなく、想像力の翼を広げ、自由に考える。そして、テクノロジーの力を借りてその夢を実現する。そのために必要なのは、AIを制作のパートナーとみなし、信頼して任せる器の大きさ、テクノロジーの重要性を理解し、科学者とコラボレーションできる柔軟な発想、そして、自分の想像力を信頼する自信である。