エースアートアカデミーは、2015年9月に港区赤坂に教室を移転しました。その際に、新しい教室の建物の外観や内装のコンセプトに合わせてロゴマークを作り直しました。
デザインのカテゴリーの1つに、「コーポレート・アイデンティティ」というものがあります。これは、企業やブランドなどが自分たちの広告媒体で使用するイメージや名刺・包装紙などのデザインを統一し、企業やブランドイメージを高度にコントロールすることで一般社会への企業・ブランドの存在感を高める役割を果たすデザインのあり方です。
新しい教室は、「モデュロール赤坂」という建物です。「モデュロール」というのは20世紀を代表する建築家であるル・コルビジェが提唱した理論の名称で、この建物自体がその「モデュロール理論」を元に設計・建築され、外観・内装ともに非常に洗練された存在感を放っています。
この「モデュロール赤坂」という建物、ル・コルビジェの理論だけではなく、ほぼ同時代にアート界に大きな功績と存在感を残したピエト・モンドリアンのスタイルが内装に取り入れられています。
ピエト・モンドリアンは、ちょうど100年ほど前、カメラが発明されてアーティストが「目の前の光景を写し取る」だけでは存在感を主張できなくなった時代に、具象から色や形を解放し、造形の重要な要素のみを徹底的に抽出することで「抽象絵画」という自己表現のひとつの頂点に立った存在です。
それから100年経った現在、アートの世界は100年前のピエト・モンドリアンの頃と同じように、大きな方向転換を余儀なくされています。100年前にアートの世界に影響を与えたのはカメラでしたが、今回、大きな影響を与えているのは「コンピューター」と「インターネット」です。
エースアートアカデミーは、アートやデザインの世界の大きな時代の変化を予感し、12年前から活動してきました。新しい時代に、新しい考え方の人材を養成する必要がある。それが、旧来の美大予備校とは全く異なったスタイルをとっているエースアートアカデミーが生まれるきっかけとなりました。
過去にエースアートアカデミーで美大受験対策をした受験生全員が、そのような時代の変化について講義を受けています。そのような授業方針・運営方針を象徴するのに、ピエト・モンドリアンは最適な存在だと判断し、今回のロゴマークを制作致しました。
今回のロゴマークは、「エースアートアカデミー(Ace Art Academy)」の3つの単語の頭文字となっている「A」を象った造形です。
造形の基本として「赤・緑・青・黄」の4色と「水平・垂直」の直線を使用しています。ピエト・モンドリアンは、「赤・青・黄色」の三原色と、水平・垂直の直線が基本。しかし、このロゴマークは、ただ単にそれを意識し、オマージュしたというだけのロゴマークではありません。
実は、科学的にはピエト・モンドリアンの提唱した「赤・青・黄色の三原色」では作り出せない色が存在します。一般的にはわかりやすい色彩ですが、厳密な理論的としてはそれは「三原色」とは言えないのです。
2012年に、「1億以上の色を知覚できる「スーパービジョン」を持つ女性が12%もいる可能性」という記事がネット上で公開されました。
私はこの記事に大変に感銘を受けました。これだけ科学が発達した時代でも、人間の認識というものは未だに不明な要素を抱えているのです。
だから私は、人間の眼が目の前の光景を認識する時の基本色である「RGB(赤・緑・青)」の光の三原色に、「スーパービジョン」の色である「黄色」を加えることにしました。つまり、今回のロゴマークは、ピエト・モンドリアンの「赤・青・黄色」に「緑」を付け加えたのではないのです。
しかも、デザインする際にはこの「RGB(赤・緑・青)」の三原色を「印刷の三原色」である「CMY(シアン・マゼンダ・イエロー)」のそれぞれの要素の100%混色で作り出すという手法をとりました。
「光の三原色」と「印刷の三原色」。この近代文化の発展とともに使われてきた三原色を基にして造形され、特別な能力を持つ人間だけがもつ色覚因子である「黄色」の因子を付け加えたのが、エースアートアカデミーの新しいロゴマークのデザインコンセプトです。
そしてそれが、エースアートアカデミーのアイデンティティであり、ブランドイメージなのです。