AO入試に気をつけよう
近年、AO入試を導入する美術大学が増えてきています。
しかし、このAO入試。大学によって入試のやり方がかなり異なる入試形でもあります。概ね、美大受験においては、以下の2つのどちらかのやり方で実施されるといえるでしょう。
- 実技試験を伴うAO入試
- 体験授業を伴うAO入試
実は、上記のAとBのどちらのやり方をとっている大学を受験するかで、「どのような受験生が 合格しやすいのか」「その大学に入学してうまくやっていけるのか」などを見分けることができるのです。
実技試験を伴うAO入試
このタイプのAO入試は、正直、推薦入試とほとんど区別がつかない入試のやり方です。
一般入試(年度末の2月〜3月に一斉に実施される入試)は、英語・国語の基礎学力の点数と実技試験の点数だけで受験生を選り分けるやり方をとる入試形式ですが、このタイプのAO入試や推薦入試は、英語・国語の試験は概ね実施されず、実技試験と面接で合格・不合格が決まってきます。
入試時期が一般入試よりも早く実施されることから、「早めに合格を決めることができる入試」という捉え方をする受験生も多いのですが、このタイプのAO入試では、一般入試で実施される実技試験以上に対策が難しい試験が実施されることが多く、合格するのは非常に難しい、といえるのです。
例えば、一般入試では実技試験で小論文だけを課す大学が、AO入試では「映像作品の撮影・編集・制作」を求めてきたりするのです。
このことから、実技試験を伴うタイプのAO入試は、以下のような受験生が合格しやすいといえます。
- 志望分野に関するある程度の実績を積んでいる
- 志望分野に関する実力がかなり高い
- 自らの将来のイメージを明確に持っている
- 自分自身の制作活動に自信と高い理想を持っている
つまり、「早い時期に入学を決めることができる」というような安易な考え方で受験しても決して合格はできないタイプの入試形式が、「実技試験を伴うAO入試」だといえるのです。
もしこのタイプのAO入試の受験を考えているなら、受験対策は必須で、しかも、かなり早い時期から実施しておく必要があるでしょう。
体験授業を伴うAO入試
このタイプのAO入試は、概ね大学で実施される授業を体験して作品制作などを行うことで「出願資格を得る」というやりかたをしている場合がほとんどです。
今までの大学受験では、大学でどのような授業が行われているのか、ということに対する情報開示はせいぜいパンフレットやホームページ上の文字情報のみでした。
しかし、このような入試のやり方が出てきたことにより、受験生にとっては、あらかじめ大学の授業を体験できるという大きなメリットが出てきた、ということになります。
その一方で、大学側も今までは入学試験の点数で判断するだけでは見えてこなかった部分を、直接確認することができるというメリットもあります。
つまり、体験授業という形で受験生に直接接する機会を作ることによって、大学の教授達は、「どういう性格をしているのか」「コミュニケーション能力はちゃんとあるか」「真面目に課題に取り組むことができるのか」など、受験生の性格・人格面の把握ができる、ということなのです。
大学側としては、このようなやり方を取ることにより、「大学生活をうまく送れそうな受験生だけを合格させる」ことができるのです。
つまり、このタイプのAO入試で合格しやすいのは、以下のような受験生だといえます。
- コミュニケーション能力や環境への適応能力が高い
- 素直で、他人の話をしっかりと聞き、内容を理解することができる
- 好奇心旺盛で、疑問や質問をそのままにせず、積極的に問いかけてくる
つまり、このタイプのAO入試を出題する大学は、「受験生の能力や実力よりも、大学生活をうまく送れることを優先して合格を決める」やり方をする大学だといえます。
このことから、このタイプのAO入試を実施する美術大学は、手軽に入学することはできるものの、実技の力や美術業界内での評価は、あまり高くない、というのが実情です。
本気でアートの世界で何事かを成し遂げよう、というような高い理想を持つタイプの受験生がこのような大学に入ったとしても、大学の授業内容や周囲にいる学友の実技力のレベルに満足できず、結局は仮面浪人で受験をしなおしたり、他の美術大学への編入学を狙ったり、という結果になることも多いといえます。
「実技試験を伴うAO入試を実施する大学」と「体験授業を伴うAO入試を実施する大学」は、受験生にひとりひとりの性格や実技力という意味で向き・不向きが顕著になってきます。
しっかりと自分に合った大学を選んで受験するようにしましょう。