美大で学べるのは?
美大受験といっても、その中は非常に幅広い分野に分かれています。ここでは、初めて「美大受験」をやってみようと思った方を対象に、大雑把な「美大受験」のイメージを説明しようと思います。
非常に大雑把なものですが、以下のような4つのカテゴリーを想像すると良いでしょう。
A.アート系 / B.デザイン系 / C.映像系 / D.芸術学系
A.アート系
ここでは、いわゆるファイン・アート(純粋芸術)と呼ばれるような分野を指しています。一般的に「芸術」という言葉でイメージするのは、この分野であることが多いのではないでしょうか。
油絵(油画)、日本画、彫刻
が、このカテゴリーに入ってきます。
「絵を売って生活する」というイメージを持っているかもしれませんが、このカテゴリーの大学の学科を卒業した人でも、以下で説明する「デザイン系」「映像系」「芸術学系」で活躍する方も存在するので、特に就職に困る、といったようなことがあるわけではありません。
B.デザイン系
今、周りを見回してみてください。そこがどこであるにしろ、現代人の生活を囲んでいるものは、ほとんど全て「デザイン」されたものです。別の言い方をすれば、「デザインされたもの」に接することのない生活は、成り立たない、ともいえるほどに、「デザイン」というのは大きな影響力を持っています。
それだけに、今では美術大学の中でも、デザイン系学科の人気が非常に高いといえます。生活に密着しているだけに、そこで扱う内容も幅広く、デザイン系の中も複雑に分かれています。
B-1.グラフィックデザイン
デザインのうち、平面になっているもの、と捉えてみるとよいでしょう。ポスター、CG、本の装丁、商品のパッケージなどのデザインがこれに当たります。
B-2.テキスタイルデザイン
大雑把に言えば、「布に関するデザイン」です。洋服、そしてタオルやカーペットなどのデザインもこれに含まれます。
B-3.プロダクトデザイン・工業デザイン
工業製品のデザインです。家電やパソコンなどの電気製品から、テーブルや椅子、文房具まで、大量生産によって工場で生産される日用品の多くがこれに含まれてきます。
B-4.空間デザイン・環境デザイン・建築
インテリア・エクステリア・建築など、空間を構築したり、空間を装飾したりすることをデザインする分野です。店舗の内装や外装、ディスプレイ、舞台やショーなどの演出、都市計画デザインなどがこの中に含まれてきます。
B-5.情報デザイン
情報処理を伴ったデザインです。ウェブデザイン、電子機器などのインターフェイスデザインの他、他のデザイン系分野でもコンピューターを使用した処理を伴う場合には、その分野が含まれることがあります。
C.映像系
インターネット環境と記録・再生メディアの普及により、現代では膨大な量の映像に無意識のうちに接しています。一般人の生活の中でも、テレビや映画、コマーシャルやデジタルカメラや携帯電話での写真撮影など、非常に身近なところに、さまざまな映像表現が存在しています。
C-1.映画・映像(動画)
伝統的な映画産業やテレビなど、華やかなイメージの業界に関わり、動く映像を制作していく分野です。実写での撮影を編集し、1つの映像作品として仕上げる、というイメージです。
C-2.写真(静止画)
新聞や雑誌、コマーシャル・フォトなど、宣伝媒体などで頻繁に使用される写真の多くはプロの写真家によって撮影されたものです。撮影する能力に加えて、コンピューターでのデジタル処理の技術も高く評価されるようになってきています。
C-3.アニメーション・CG
実写での撮影というよりも、絵を描いてそれを動かしていく、というイメージです。目の前の光景をカメラで撮影するというわけではなく、カメラの実写では撮影しきれないイメージを絵やCGで表現して動かす、ということが中心になります。
C-4.メディア映像
主にコンピューターでの映像処理をメインに考え、インターネット環境やインターフェイスなどの最新技術を最大限に利用して、新しい映像表現のあり方を追求しようとする分野です。
D.芸術学系
D-1.芸術学・アートプロデュース
自分自身で作品を制作してそれを発表したり売ったりするというよりも、他の誰かが制作した作品を鑑賞・研究して、その価値を一般社会の中に浸透させていく役割を担います。美術業界と一般社会のパイプ役、といったイメージです。
D-2.基礎デザイン
芸術学・アートプロデュースとやる内容はほぼ一緒ですが、研究の対象がデザインに特化されます。現在のところ、武蔵野美術大学の基礎デザイン学科と多摩美術大学の統合デザイン学科が、この分野に特化して学科を編成し、学生募集を行っています。
大雑把に言えば以上のような感じですが、近年はそれぞれの分野ごとの垣根があまり高くなくなっていて、他分野から別分野へ切り込んでいくことも大分やりやすくなっています。
大切なのはまず「自分が何をやりたいか」です。それによって、目指すべき分野も変わってくるといえるでしょう。
美大受験を志す受験生の方が実際にどの分野を目指すべきかについては、いつでもご相談に乗りますので、お気軽にお問い合わせください。