
模範解答と参考作品の違い
毎年、秋頃には各大学で募集要項の配布がはじまります。
この時期には、募集要項の他に、入試参考作品集の配布も同時になされ、前年度の入試で出題された実技試験をや学科試験の問題と、実技試験の場合は「参考作品」、学科試験の場合は「模範解答」が掲載されています。
ここでは、その「参考作品」と「模範解答」の大きな違いを説明したいと思います。
A. 模範解答
美大受験において、「模範解答」が存在するのは、「英語」「国語」「数学」などの、いわゆる学科試験においてのみです。
これらの科目は、いずれも出題に対する「正しい答え」が存在します。
「模範解答」が存在するのは科目を勉強するということは、「どのように正しい答えを導き出すか」を身につけることを意味します。
だからこそ英語や国語の勉強で受験生はみんな、正しい知識を覚え、それを導き出すためのテクニックを身につけようとするわけです。
B. 参考作品
「参考作品」という表現が使われるのは、いわゆる実技試験(デッサン、専門実技など)においてです。別の言い方をすれば、実技試験に関しては、「模範解答」は、存在しないということになります。
アートの世界は、たったひとつだけ存在する正解(模範)に、みんなが向かっていくような世界ではありません。
ひとりひとりの人間が持っている個性と発想力を大切にし、それを深めていくことで価値を高めていくことを目指すのがアートの世界です。みんなそれぞれ、目指す方向は別のところにあるのが、美術の世界では当たり前のことなのです。
だから、自分以外の他の誰かが作った作品は、「模範」とはならないのです。
他人の作品は「模範」ではなく、自分の作品の価値をより高めるための「参考」に過ぎません。他人の作品を真似してしまうことは、アートの世界では、ある意味何よりも恥ずかしいことになってしまうのです。
他人の作品を踏み台にして、自分の作品をより良いものにする方が、高く評価される、と言っても良いでしょう。
だから実技試験では、決して「模範解答」を探さないようにしましょう。他の誰かが設定したものを目標とするのではなく、自分で考えて、自分のやり方で作品を作るような受験生が、美大では常に求められているのですから。